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2010年5月5日水曜日

インタビュー@エロー県庁

2010年5月4日(火)自17-至19 於・エロー県庁内、執務室
マダムSさん

フランスの地方公共団体における異動の流動性が組織の合併に及ぼす影響につき、国・地方を通じた組織の合併に関する日本の状況との比較において説明の上質疑を行ったところ、概要以下のとおり。

・人事の基準は、1)政治的事情、2)能力(経歴。財政か人事かなど)、3)その他 がある。もちろん、場合により、出身役所を考慮することがありうる。というのも、その地域や役所のことを一から全部説明しなければならないソトの地域の人よりも全てを知る地元役所出身の者を雇う方が特に管理職としてはふさわしい場合があるだろう。逆に、場合により、全く新しい人材を好むことも考えられる。一般化はできない。

・フランスの市町村共同体は、元の市役所が残る形。他方、ストラスブールとナンシーでは、元の市役所と完全に中心地の市役所が合体している。

・以前働いていたリヨンの例。リヨン市はもちろん大きな市だが、リヨン市町村共同体の中には、1種職員が1人とかいうケースがある。フランスの地方公務員は、昇任のためには最低1度他市町村への異動を経なければならないが、その際、みな基準とするのは手当てが多い自治体。したがって、小さな自治体より大きな自治体が魅力的となる。小さな自治体にとっては人材流出は大きな懸念であるから、どうするかというと、小さな市長が大きな市長のところへ行って、うちの職員があなたのところへ求職しても採用しないでもらいたい、と交渉することだという。一度採用すると決められてしまうと、職員を移動させることを求められた側の市長には異動時期以外に意見を言える権利がないことから、事前にこのような交渉をすることがままあるとのこと。

・フランスでも「団塊の世代」が存在し、退職金が大きな問題となっているため、公務員の定数削減が進められている。このため、よいポストを得ることはどんどん競争的となりつつある。

・(CNFPTが市町村職員の移動を管理しているのかとの問いに対し)No、その組織の第1のミッションは、研修である。もちろん副次的に職業紹介所(アジャンスといっていた)の機能を果たしうるが、あくまでもそれは本来機能ではない。

・フランスの地方公務員は実際に流動性が非常に高い。当方さんがいうとおり、統一的な地方公務員試験、これは国家資格であることに注意してください、に合格すると、各自治体に履歴書と動機書を持って応募するが、その後の異動も含めてそこにはいくつかやり方があって、1つはgazette, lettre du cadreといった雑誌に投稿された記事の中から選んで応募する、2つは公務員間の人的ネットワークが存在するので、そこを通して行う、あとは自治体HPを見る、という感じ。

・流動性が高い、といったが、それはカテゴリAとBの話。Cはほとんど出身役所を動かない。だから、こうした応募雑誌に掲載される求人はすべて。AかBに対するもの。

・フランスの公務員は大きく3種類存在する。国家公務員、病院公務員、地方公務員。この中で地方公務員が流動性のモデルとなっている。全国規模でポスト競争が存在する。なお、国家公務員に関しては、大統領がかわるたびに、役所の編成が変わるにもかかわらず、グランコール(外交官団、財務、知事など)は維持される。たとえば、以前minisitere d'equippement という役所があったが、いまでも都市整備に関する役所にはここ出身の者で占められる。非常に強い連帯感がある。

・(あなたの帰属意識はどの団体に対してあるのですかとの問いに対し)文化的には出身地のリヨンだが、職業的な帰属意識は、そのとき働いている場所の上司に対してである。今はmis a disposition(部分出向)なので、CNFPTから給料をもらいつつ県庁で働いているが、ここに対して帰属意識を持っている。ナンシーで働いていたときには、ナンシーに、モンペリエのCNFPTで働いていたときにはそこへ、という具合。

・(流動性が高いというのはAやBに当てはまるという一方、公務員人口に占める割合は8割方Cだという事情を踏まえると、全体としてみた場合には、流動性が低いということになるのではないか、との問いに対して)そうなると思います。


・自治体間の人材の移動は、どのような形式で行われるのかとの問いに対し)多くは完全異動(mutation definitive)であろう。detachement(出向)は2ー6年と期限が決められており、その後本人が希望すれば元の団体は必ず受け入れなければならないが、派遣先団体に完全異動することを選択することも可能。他方、彼が出向している間、よい人材が見つかり、彼が派遣元で占めていたポストを埋めることができた場合、彼は復帰することを望んでも、当該ポストにもどることができない状態になる。また、定員減が求められる状況で地元で働かない職員を雇い続けているのをいやがる市長も多いことから、完全に「aurevoir」といえる完全出向のかたちが増えているのではないだろうか。


・(モンペリエアグロメにおける各団体出身職員というのは、モンペリエ市出身が多いのではないかとの見解についてどう思うかとの問いに対して)分からない。それはモンペリエアグロメに聞いてみないといけない。でも私が人事課長なら、モンペリエ市以外から登用する可能性も十分にあると思う。先に述べた基準でも、例えばモンペリエのことをよく知っているかという点では周辺自治体については当てはまることが多いだろう。


・BIEPというサイトが参考になる。

・給料のうち7割は決まっているが、残り3割部分は自治体によって異なるから、よりよい食を求める競争が起こる。

・(モンペリエアグロメのキャビネの職員はほぼみんなモンペリエ市出身だがとの問いに対して)それは当たり前である。彼らは政治任用なのだから、アグロメの長がモンペリエ市長だったジョージフレッシュである以上、それは論理というもの。

以上


日本に興味のある方なので、非常に和やかに質疑をすることができました。このほか、フランスの公務員でも、カテゴリーAの人は当然残業をするし、週70時間は働いているとのこと。県庁職員は滞在許可証のときに非常によいサービスを提供してくれた旨水を向けたところ、つまるところ彼らはカテゴリーCなのだからという答えでした。

事前の予想では、フランスでは、日本と違って、地方公務員は統一試験をうけるので、かなり流動性が高いというのは制度上の話であって、実際は、土地への愛着があるのだから、そんな頻繁に異動しないだろうと踏んでいたのですが、彼女によれば、カテゴリA/Bに限っては全くそれは妥当しないということです。しかしながら、カテゴリCについては、消極的理由(引っ越したくないなど)から異動を希望しないし、そもそもごみ収集といった業務の実施者をあえて遠い地域から採用する必要性に乏しいとのことでした。日本企業でも「全国型」「地域型」(総合職、一般職)といった区別があることとパラレルに考えれば容易に想像はつきます。

となると、日本と異なって、役所の「枠」が資格上も(日本地方との比較)、運用上も(日本国家との比較。国家公務員は資格上は「日本国公務員」で統一、各大臣が採用、ということでフランス地方と酷似するも、途中の完全異動は、ほとんどないといえる)はまっていない、というところに大きな特徴があり 、つまり彼女もいっていたとおり、この役所が一生の帰属先、といった場所ではない、ということでしょうか。そういったアイデンティテイl意識の希薄さが、自治体における市町村共同体内の人事を容易にすることにつながっている、といえそうです。

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